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ヒルサイドテラスの“住人”たち Part3 レポート 第5回 「風景を記述する試み」 新津保建秀

2012年12月19日(水) ヒルサイドフォーラム

ヒルサイドテラスの住人たち

 写真を中心に、映像やフィールドレコーディングなどの作品制作を続ける一方、複雑系科学の研究者・池上高志さんや、音楽家・渋谷慶一郎さんなど、異分野のクリエーターとのコラボレーションなど、多彩な活動を展開する写真家・新津保建秀さん。今回の住人セミナーは、同時開催された展覧会「風景+」会場で、展覧会のキュレーターをつとめた四方幸子さんをモデレーターに、インターネットの普及に伴う“フリーカルチャー”の戦略を説くドミニク・チェンさん、「美術手帖」編集長・岩渕貞哉さんをゲストに迎えたトークショー形式で行われました。

風景を記述する試み
風景を記述する試み

 2002年に構想が始まり、10年を経て完成をみたという写真集『風景』。都市の中の生活圏と、そこにおける不可視な場の境界を捉え、無意識の風景を立ち上げようとしたこの作品集は、「見えないものを撮る」写真家・新津保さんのひとつの到達点を示すものとなっています。そこに至る過程で、ヒルサイドテラスにアトリエを構えたことで、場や空間への意識、時間など目に見えないものへの感覚が変わったと新津保建秀さんは語ります。猿楽町という古墳時代から人々の生活が営まれていた土地にまつわる歴史、槇文彦さんの建築、オーナーの朝倉家の人々をはじめとするヒルサイドテラスに関わる人々との交流、そこをベースとした活動。「土地、建造物、そして人の生活の営みの痕跡、音や匂いそれぞれのレイヤーが多層的に重なる、人と環境の間にある見えない部分にこそ、この場と建築空間の本質があると感じ」たという新津保さん。地域の子ども達へのワークショップや学生・プロ・社会人を対象としたクラブヒルサイドの写真スクール、そして今も連載が続くWEBでの「Hillside Scenery」など、ヒルサイドテラスに独自の方法で深くコミットされてきた新津保さんならではの言葉が続きます。

風景を記述する試み
風景を記述する試み

 後半では、『風景』を出発点に、写真やデジタル環境のあり方をゲストと共に考えるディスカッションが展開されました。美術手帖誌上で、特集『写真2.0』をはじめ積極的に写真というメディアをアートの文脈で取り上げる岩渕編集長は、『風景』における写真を取り巻く環境に対する批評性に注目します。一方、ドミニク・チェンさんは、人間が一生かかっても見きることのできない量の写真が存在する中で、写真家は何を撮っていくのかが問いかけられていると言います。コンピューターの出現によって、カメラを通さない写真が始まっている現在、風景をめぐる情報のアーカイブともいえる写真集『風景』は、そうした写真の新しい地平におりたつものとも言えるのでしょう。匿名性に向かう写真家のあり方とそこから偶発的に生まれる可能性。近代の「個」を超えたあり方の摸索の延長に、新津保さんが共同作業を試みる理由も明らかにされるのでしょう。そしてこの4者によるトークセッション自体もまた、新津保さんの「個」の融解を企図するものだったことがわかります。刺激に満ちた新しい形の住人セミナーでした。

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